2016年11月12日(土)-13日(日)、東京の国連大学におきまして、第十回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国135校(202チーム)からご応募いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々 に心より御礼申し上げます。
日 程: 2016年11月12日(土)-13日(日)
会 場: 国連大学本部
議 題: 国連総会軍縮・安全保障委員会(第1 委員会)政府専門家会合
United Nations General Assembly Disarmament and International Security
Committee
(1st Committee) Group of Governmental Experts
国際安全保障の文脈における情報及び電気通信分野の進歩
Development in the field of informationa and telecommunications in the
context of
international security
議題解説書:GCJ2016BG.pdf
■会議紹介(文責:会議監督)
サイバー空間は、陸・海・空・宇宙に続く、「第5の戦場」である。―これは、2011年にアメリカの国防総省が発表した「サイバー戦略」の一節です。
みなさんが持っているスマートフォンやパソコンはインターネットにつながっています。実は、インターネットはサイバー空間の一部なのです。ご存知の通り、インターネットの発達により我々の暮らしはとても豊かになりました。しかし、他人のパソコンを乗っ取り、悪用することも容易にできるようになってしまいました。
昨年、日本年金機構において個人情報が流出するという事件が発生しました。これに代表されるように、日本の企業や省庁に向けたサイバー攻撃も近年増加しています。教育企業から個人情報が流出した例もあったことを考えると、皆さんの個人情報も流出の危険に晒されているのかもしれません。
世界に目を向けてみましょう。およそ10年前、北ヨーロッパのエストニアに対してサイバー攻撃が仕掛けられました。早くから「IT立国化」を進めていたために、国家が機能不全に陥るほどの被害を受けました。ちなみに未だに「犯人」は捕まっていません。攻撃元の特定が困難なこともサイバー攻撃の恐ろしさです。また、先進諸国が着々と「サイバー戦争」への準備を整えている中、未だに発展途上国の一部には、サイバー後進国と呼ばれ、セキュリティ対策のおぼつかない国もあります。攻撃者は僅かなセキュリティの穴を見逃しません。そのため、国際的なセキュリティレベルの向上に向けて協力しなければならないのです。
もちろん世界各国で対策が進められています。例えば中国では、セキュリティ保持のため監視を行っていますが、人権面から国際社会で問題視されています。このようにサイバーセキュリティ対策の方法をめぐっても、世界で統一が取れているわけではないのが現状です。
サイバーセキュリティは現在国際的に最も関心を持たれている分野といえます。みなさんの生活においても、IT技術、サイバー空間はますます存在感を増すでしょう。そのようなサイバー空間が抱える問題点について国家の立場から考えてみませんか。多様な解決策を生み出そうという意欲のある皆さんの参加をお待ちしています。
■会議の流れ(文責:会議監督)
本会議では「サイバー空間」というテーマのもと、これまで行われてきた国際的な議論を踏まえて、サイバー空間における国際的な規制について話し合いが行われました。論点は以下の3
つでした。1 つ目が「情報セキュリティの捉え方」ということで、具体的には「情報」を国家の管轄下に置くか置かないかなどの問題を表現の自由、知る権利などの考え方を踏まえながら検討しました。2
つ目が「各国家の行動についての規範」で、これまでの国際会議の概念的なレポートに記載されている国家の行動の方針を具体化してもらいました。3 つ目は「サイバー後進国のキャパシティ・ビルディング」ということで、サイバー空間の性質上、セキュリティ技術のボトムアップが求められる中、世界的にどのような支援を行っていくか、検討しました。
会議の開催に先立ち、「限られた時間内で効率的に議論を行う必要がある」「1 つ目の論点が他2 つの論点の前提になる」という見解のもと、会議冒頭に全体で論点1
について話し合うことが議長から提案されました。
<議場A >
議場A では議長の提案に多くの大使が共通の見解を持っていたようで、会議冒頭で着席討議(Moderated Caucus: MC)において論点1
の話し合いがなされました。各国間でどのような意見の齟齬があるのかが確認され、その後はグループごとに論点2、3 を含めた非着席討議(Unmoderated
Caucus: UC)による話し合いが行われ、適宜全体での情報共有をはさみながら、作業文書(Working Paper: WP)の作成
を目指し交渉が進められました。結果的に1 日目終了時に6 本のWP が提出されました。
2 日目は1 日目のWP を基本として、全会一致による決議案(Draft Resolution: DR)の作成が行われました。グループの統合も行われ、最終的には2
本のDR が提出されました。DR 内での文言の矛盾を解消するために議長によってDR に大幅な修正を加えられるなど、交渉が十分に尽くされたDR
とはいえないものもあり、2 本とも可決されたものの全会一致とはなりませんでした。
<議場B >
議場B では、まず1 つ目の論点について考えを共有し進め方を決めるという議長提案は通らず、最初からすべての論点について、UC によって包括的に議論することに決定しました。会議開始当初のUC
では先進国や途上国、また地域ごとなどにグループが分かれていましたが、次第に政策ごとのグループへと変遷する様子が見られました。1 日目終了時には計8
本のWP が提出されました。
2 日目は議長から各WP の内容のバッティングや矛盾についての指摘があり、DR 提出に向けて当該箇所の訂正と各グループ間の擦り合わせが行われました。DR
は2 本提出されましたが、片方は提出要件を満たしていなかったため、最終的にはもう一方のDR のみ受理されました。その後は受理されたDR の内容についてモデで質疑応答を行って疑問を解消することで全会一致での採決を目指す様子が見られ、結果的にも全会一致での採決に成功しました。
■受賞校一覧
最優秀賞
会議 A:Netherlands 大使 渋谷教育学園幕張高等学校A チーム( 千葉)
会議 B:Belarus 大使 灘高等学校A チーム( 兵庫)
優秀賞
会議A:Brazil 大使 桐蔭学園中等教育学校B チーム( 神奈川)
Canada 大使 開成高等学校B チーム( 東京)
会議B:Poland 大使 浅野高等学校( 神奈川)
Republic of Korea 大使 渋谷教育学園渋谷高等学校A チーム( 東京)
ベストポジションペーパー賞
会議 A:France 大使 桐光学園高等学校( 神奈川)
会議 B:Russian Federation 大使 中央大学附属高等学校( 東京)
報告書はこちらからご覧いただけます。