第七回 全日本高校模擬国連大会

2013年11月16日(土)-17日(日)、東京の国連大学におきまして、第七回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国103校(164チーム)からご応募いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々 に心より御礼申し上げます。
日 程: 2013年11月16日(土)-17日(日)
会 場: 国連大学本部
議 題: 児童労働 (Child Labour)
会議場:第68会期国連総会社会人道文化委員会
United Nations General Assembly, Social, Humanitarian and Cultural Committee(3rd Committee)
議題解説書:GCJ2013BG.pdf

■会議紹介(文責:会議監督)

 「児童労働」。この言葉は皆さんにとってどれくらい身近なものでしょうか。皆さんの中にはいわゆる発展途上国で働く子どもたちの姿をテレビで見たことがある人もいるでしょう。それでは児童労働はテレビの中だけのものなのでしょうか。発展して豊かになった日本人には、もう関係のない話なのでしょうか。

 21世紀に入り10年以上を経た現在に至っても、児童労働に従事する子どもの数は未だ2億人を越えています。これはおよそ7人に1人の子どもが働いている計算となり、彼らのほとんどは賃金をもらうこともなく、ただ働きをしています。コーヒーやカカオ農園で働く子どもたち、親の借金を背負って奴隷のように働かされる子どもたち、人身取引の商品となる子どもたち。彼らは長時間の厳しい作業や有害な薬剤の使用などで健康を害し、時には暴力を振るわれて心身ともに傷を負ったまま働いています。そして日々働く子どもたちは学校に行く時間もなく、十分な教育を受けることができません。日本にいる皆さんが学校で勉強している間にも、児童労働は確かに存在しています。

 児童労働は国際的にも長年重要な問題と認識されており、国際連合やInternational Labour Organization(ILO、国際労働機関)を中心として様々な活動が行われていますが、未だ解決には至っていません。児童労働は何故なくならないのでしょうか。その大きな原因が、貧困にあります。その日の食事も確保できない貧困に苦しむ中で、子どもたちは生きるために働かなくてはいけないのです。そして親も、子どもを働かせ、時には売らなければ自分が生きることが出来ないのです。この現実を見つめずに、「児童労働は悪だ」と理想を叫ぶだけでは児童労働をなくすことは出来ません。

グローバル化の時代に生きる我々に求められるのは「日本人」だけではない多様な視点です。児童労働の問題をとっても、アメリカの視点から、中国の視点から、ナイジェリアの視点から問題を見つめることで、それまで気づかなかった新たな世界が見えてきます。それは同時に、日本人である自らを問い直す経験でもあります。

国家に、国連に何が出来るのか。どうすれば児童労働を真に解決することが出来るのか。一国の代表としてこれからの世界のあり方を全力で考えたい。グローバル・クラスルーム日本委員会はそんなあなたの参加を待っています。

■会議の流れ(文責:会議監督)

<会議1日目>
1st meetingでは議長の裁量によって児童労働の原因およびその解決策の共有を目的としたModerated Caucusが取られました。昼食後の2nd meetingではUnmoderated Caucusを中心としてDR作成が行われました。DRの提出期限が迫るにつれ各グループでの交渉が積極的に行われました。DRの内容については体裁・内容面ともにこの段階では非常に不十分だったといわざるを得ません。

<会議2日目>
3rd meeting では提出されたDRを基にそれをよりブラッシュアップしていくための議論がなされました。このmeetingではDRについての内容共有や質疑応答を目的としたModerated Caucusが行われました。4th meetingでは最終的に3つのDRが採決にかけられ、全てのDRにおいて多くのAbstantionがでましたが、全て採択されるという結果となりました。


■会議総括(文責:会議監督)

会議においては児童労働の原因、またそれらの原因認識に基づいた児童労働解決に向けての政策案についての活発な議論が行われました。原因についての認識では貧困、教育へのアクセスに着目したものだけではなく、企業の児童労働への取り組み、賃金などの労働条件、HIV/AIDS、保護者の児童労働への関心などについても論点として議場で共有され、異なる各国が集まって議論する国際会議の意義が現れていたといえます。児童労働解決の政策案は原因分析以上に多様な政策が共有されました。全てが十分な政策の質を備えていたとはいえませんが、アイディアが議場に共有され議論を経る事で最終的にはより具体化された、有益な政策として採択されたものもありました。特にFair Trade、CSRなどの観点から立案した政策、既存のILO-IPECなどを活用する政策、また全く新しい国際機関を立ち上げるなど非常にユニークな政策が多く見られました。

以上の議論の過程で主に地域別にグループが結成され、会議初日終了時にはDraft Resolutionは5つ提出されました。その内3つが最終的に採択にかけられました。多くの国が棄権票を投じたものの、全ての決議案が可決されました。

児童労働という国際問題はそれを現在有する国とそうでない国で大きく立場が異なります。日本人の観点からは容易に想像はできませんが、児童労働を解決すべきではないと考える国もいるかもしれません。どのように様々な立場の国が存在する国際社会として児童労働に取り組むべきか、国際社会が児童労働に取り組むことにどのような意義があるのか、果たしてそれは本当に可能なのか。全ての参加者がこの葛藤に悩まされたと思います。

国際問題を考える上で、理想のみを追いかけることは出来ません。しかし現実を見て理想と違うからといって諦めてしまっては、何ら解決にはつながることはありません。現実を直視する中で、如何に理想を目指すのか。どのような問題にも存在するその2つの葛藤を考え続けることで今後の会議に活かしていただければと思います。

■受賞校

最優秀賞:渋谷教育学園幕張高等学校(エチオピア)
優秀賞:大阪教育大学附属池田校舎(モロッコ)、実践女子学園高等学校(ソマリア)、渋谷教育学園渋谷高等学校(ウガンダ)
    聖心女子学院高等科(ケニア)、灘高等学校(中国)
ベストポジションペーパー賞:聖心女子学院高等科(サウジアラビア)

報告書はこちらからご覧いただけます。