2015年11月14日(土)-15日(日)、東京の国連大学におきまして、第九回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国136校(203チーム)からご応募いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々 に心より御礼申し上げます。
日 程: 2015年11月14日(土)-15日(日)
会 場: 国連大学本部
議 題: 国際移住と開発(International Migration and Development)
会議場:国連総会経済・財政委員会(第二委員会)United Nations General Assembly Economic and Financial
Committee (2nd Committee)
議題解説書:GCJ2015BG.pdf
■会議紹介(文責:会議監督)
「移民」と聞いてみなさんはどんな人たちを思い浮かべるでしょう。豊かな国で低賃金労 働に励む人々を想像する人も多いのではないでしょうか。しかし、実はそうした想像以上
に、彼らは様々な仕事をしています。肉体労働に従事する人もいれば、医療や看護に携 わる人や、IT 関係の仕事の第一線に立つ人もいます。みなさんの中にも、将来外国へ行
き、「移民」として活躍する人がいるかもしれません。日本でも、少子高齢化対策として移 民の受け入れ数を増やすか検討されるなど、移民という現象は身近になりつつあります。
移民の数は今や世界全体で
2 億を超えています。グローバル化が進み、人の移動がよ り容易かつ活発になった現代において、この数は今後も増え続けると予想されます。日本
であれ海外であれ、みなさんが様々な国から来た人と共に働く機会も多くなることでしょ う。しかし、移民現象は各国に利益をもたらすだけでなく、様々な問題を世界各地に生じ
させています。
移民受け入れ国では、足りない労働力をおぎなう人材として、移民がその国の経済成長 に大きく貢献しています。しかし、移民はそうした国では貧しい暮らしを送っていることも
多く、強制労働や人身売買の被害にあう状況が生まれています。また、文化の違いから 移民に差別や危害が加えられることも多く、世界的な問題になっています。一方、移民送
り出し国では、移民が海外で稼いだお金を本国へ送金することで、その国の収入が支え られています。しかし、自国の発展を支える優秀な人材が海外へ出ていってしまうため
に、自国の経済成長が困難になるという側面もあります。
私たちの生きている現代がグローバル化の中にあることは疑いようがありません。しかし
私たちは普段、グローバル化が引き起こす事柄について、良い面のみ、あるいは悪い面 のみばかりに注目してしまいがちです。問題の本質はもっと複雑で、相互に絡み合ってい
ます。移民のメリットを維持しつつ、移民をとりまく問題に対処するために、各国は何がで きるでしょうか。
移民現象に対する考え方は、国によって様々です。みなさんはその国の代表として会議
に参加し、その国の未来のために解決策を考えることになります。それぞれの立場から移 民について考えることで、思わぬ気づきを得られるでしょう。それは、みなさんが将来働く
ことになる日本、そして世界を考える上で、大きなヒントになるはずです。問題の本質を 捉え、多様なアイデアを生み出す意欲のあるみなさんの参加を期待しています。
■会議の流れ(文責:会議監督)
本会議では、「国際移住と開発」という議題のもとで、①頭脳流出、②非正規移民、③移民が直面している困難への対応という3つの論点が設定され、国際移住のプラスの影響を最大にし、マイナスの影響を最小にすることを通して、持続可能な開発を達成するための議論が行われました。
会議の開催に先立ち、「国家間で対立することも予想される複数の論点を、限られた時間内で十分に議論しなければならない」という問題意識のもと、会議冒頭に議論の進め方について議場内で話し合い、決定することが議長より提案されました。多くの大使が同じ問題意識を持ち、会議冒頭では着席討議(MC:
Moderated Caucus)で議論の進め方が話し合われました。
<会議A >
会議A では、地域ごとに話し合う進め方や、各論点を順番に扱う進め方、議題に対する立場が同じ国同士で話し合う進め方など様々な意見が出されました。最終的には、「地域ごとに集まる進め方を基本とするが、適宜立場を同じくする国同士でも集まる」という折衷案が議長より提案され、会議A
の議論の進め方として決定しました。その後、地域ごとのグループを主体に非着席討議(UC: Unmoderated Caucus)で議論が行われ、1日目終了時に作業文書(WP:Working
Paper)が7 本提出されました。
2 日目は、1 日目のWP を基本として、3 本の決議案(DR: Draft Resolution)が提出されました。その後の修正作業では、各グループがコンセンサス採択を視野に入れ決議案の統合を目指しましたが実現はせず、それぞれのDR
の修正案3 本が提出されました。3 本全てが投票した国の中で過半数の賛成を得て可決されましたが、どれも一定数の反対国がおり、コンセンサスでの採択には至りませんでした。
<会議B >
議場B では議論の進め方について論点ごと、地域ごと、立場ごとなど様々な提案がなされ意見が分かれました。投票の結果、論点や地域を超えた、立場を同じくする国同士で議論を進めることが決まりました。その後のUC
では立場の近い国が集まってグループが形成され、各グループ内でWP の作成が進められました。1 日目終了時には複数の論点を含むものや、頭脳流出の論点に特化したものなど計6
本のWP が提出されました。
2 日目の冒頭には、WP 間の文言に矛盾があったことが議長から指摘されました。その後の各国大使の交渉を通して矛盾は解消され、DR は4 本提出されました。修正案へ向けた作業では各文言の趣旨について再確認がなされ、最終的に4
本の修正案が投票にかけられました。投票はすべて点呼投票によって行われ、DR.4/rev.1 に棄権が1票あったことを除いて、その他3本の修正案には全ての国が賛成票を投じて採択されました。
■受賞校一覧
最優秀賞
会議A: Sudan 大使 桐蔭学園中等教育学校B チーム( 神奈川)
会議B: Russian Federation 大使 灘高等学校B チーム( 兵庫)
優秀賞
会議A: Argentina 大使 神戸女学院高等学部( 兵庫)
Sweden 大使 渋谷教育学園渋谷高等学校A チーム( 東京)
会議B: Canada 大使 麻布高等学校( 東京)
Portugal 大使 関西創価高等学校A チーム( 大阪)
ベストポジションペーパー賞
会議A: Angola 大使 愛知県立旭丘高等学校A チーム( 愛知)
会議B: Australia 大使 東京女学館高等学校A チーム( 東京)
報告書はこちらからご覧いただけます。